思い出( ..)φメモメモ

Venus
机に置きっぱなしになってたペーパーバックを本棚にしまおうとしたら、
しおり代わりにしていた、芝居のチケットが出てきました。
そのうち、チケットも記憶もなくなってしまいそうなので、( ..)φメモメモしておこうと思います。
チケットによると、2000年2月26日に見たようです。
この時期、サンディエゴで開かれた学会に出席しておりました。
確かこのあとすごい雨で飛行機が飛ばなかったり、
サンディエゴにしてはえらく寒い変な天候だったことを覚えています。
イギリス人の友人が新聞で見つけて誘ってくれて、たまたま学会に参加していた
作家の卵の青年がおもしろい劇場だといってくれたので、彼らと見に行ったと思います。
劇場は the Fritz theatreで、サンディエゴのダウンタウンでした。
調べてみると、この劇場、もうなくなってしまっているそうです。
いわゆるExperimental theatreの劇場・劇団だったようです。
で、みた、お芝居はピューリッツァー賞GNUストールマンなどと同じマッカーサー財団の天才として認められた
劇作家Suzan-Lori Parksの「Venus」という芝居でした。
とても印象的なお芝居でした。
お話はHottentot Venusというなで見世物にされていた、
Sarah Saartjie Baartman (1789 – 29 December 1815)を 描いた話です。
ヨーロッパの白人社会で見世物として異形のものとして扱われる南アフリカからきた女性。
舞台はこの女性が亡くなったことを声高に叫ぶことに始まり、彼女の半生を描き彼女の死で終るというもので、
その彼女の半生を描きながら、話をつむいでいくのは、
愛人でもあった博士によって解剖されて書かれたその解剖報告というスタイルだった気がします。
しかも、中途半端な劇中劇はでてくるわ、解剖報告がとつぜんはいってきたり、
前情報なく見たので疲れた記憶があります。
アマゾンで売られているこの戯曲のカバーを上に貼りましたが、venusはその絵のとおり、
異様に大きなお尻という奇形、異形、
そしてそれに対する白人男性のフェティシズムということで見世物とされたようです。
で、そうなってくると完全に虐げられた奴隷としての女性なのかというと、
これが、知的に立ち回る部分をみせ、また博士との恋愛も決して受身だけではないところを見せ、
博士との恋愛が彼女を強くしていく。
彼女のほうが、彼より達観した目で、自分たちの関係を見ているようでした。
この単純でないvenusを私はつかみきれませんでした。
中途半端に意志の強い奴隷の女性?恋愛に身をささげた女性?
よくわからなくなりました。
多分、白人男性からではない視点ということなのでしょうが、
ちょっと混乱させられました。
むしろ、支配する白人男性の抑圧されたフェティシズム
悶々と悩む男性を強調されたほうがわかりやすかったかな?
で、一番困ったのは、私が見た舞台のvenusはそんなに異形な人ではなく、
とてもスリムな美人だったので、その耳に入ってくる彼女の体型と見ている形との違いに、
混乱してしまいました。
歴史研究者としては彼女の生きた時代は奴隷制度廃止運動が盛んな時期で、
奴隷貿易も法律上は違法となった時代。
それを描いてほしかったなあ。

ただ、印象的だったのに、あまり覚えていない。
芝居の後、一緒に見に行った友人とピンクジンファンデル飲みすぎて、
芝居の記憶がいまひとつ残っておらず、
むしろ次の日のホテルの珈琲のありがたさが鮮明です。
このときのホテルの朝の珈琲えらくおいしくて、たまに無性に飲みたくなります。
泊まっていたのは、サンディエゴのシェルターアイランドにあったBay Club Hotelでした。
二度ほど泊まりましたが、べつに近代的でないけど、珈琲がおいしくて、
スタッフもよくていいホテルでした。

珈琲の味は覚えているのに、芝居がいまひとつ思い出せない。
自分の記憶のもやもやと理解できなかったもやもやを取るためにも、
近いうちに戯曲を読んで見ようと思います。